ショコラ SideStory
隆二くんは私の苛立ちなんか気づきもしないように、呑気にお皿にのったクッキーを差し出す。
「試食する?」
「いらないわ。先に夕飯がいい。エプロン外して出かけましょ?」
「え? もうそんな時間か?」
「そんな時間よ。駅前の定食屋でいいわ。私はお腹すいて死にそうよ」
睨んでやると、隆二くんはぎょっとしたように私を見て、次に時計を確認した。
「作る……時間も待てない?」
「待てないわ。早くして、キレるわよ」
「わかった」
陥落したように隆二くんが厨房に下がった。
いいから一度『ショコラ』から離れてよ。
私の本心はそんなとこ。
ヤキモチやきは今でも健在だ。