ショコラ SideStory

「実はうちは店舗にはそれほどお客さん来ないのよ。多いのがインターネットでの販売。あとは予約商品がメインかな。商品はほとんどがアイシングクッキーなんだけど、店舗にはマフィンとかちょっとしたケーキを置いたりしてるの。近くに小学校があったでしょう? そこの先生や子どもたちが買いに来るから」

「はあ」

「一応アイシングクッキーの専門店だから、詩子ちゃんはクッキーメインでやってほしいの。特に四月は入学式の記念に配るこのタイプのクッキーが人気だから、すぐにでも作れるようになってほしい」


見せられたのは、ランドセルと黄色い帽子のクッキー。もう一枚、『入学しました』と書かれた桜で縁取られたメッセージクッキーがある。


「お祝いを頂いた家とかのお返しとして人気なの。こんな感じで結構節目節目に注文が多発するからね。私が出産したらしばらくは任せることになると思うから、頑張って」

「えっ、でも。出産っていつですか」

「予定日は六月なの。産んだ後、すぐ復帰する気ではいるけど、赤ちゃんいたら集中してできないでしょ。だから、詩子ちゃんに結構任せることになっちゃうと思うんだ。あ、パソコン扱える? ネット注文の処理とかも覚えてもらうからね」

「はあ」


ぱたぱたと説明され、目が回りそう。
要は三ヶ月で大方のことができるようになれってことなのね。できるのか? あたし。


「あ。それと、住むところはここの二階ね。私は近くに家があるから……」


そこまで言ったところで、店先のドアが勢いよく開いた。
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