ショコラ SideStory


 満腹になって夜の道を戻る。

家に行くのかと思ったら、やっぱり向かうのは『ショコラ』らしい。
どうやらやりかけのクッキーやら何やらが気になるようだ。


「ところで、今日は詩子は?」


店の扉を開けながら聞くと、隆二くんは渋い顔を見せる。
それだけで聞かなくてもわかった。


「デートね?」

「……だから家に帰りたくないんだ」

「なんで?」

「帰りが遅いと気になるじゃないか」

「別にいいじゃない。詩子ももう大人よ」

「まだまだ子供だよ」


ふてくされた口調のまま、隆二くんは厨房に入りお湯を沸かした。
どうやらコーヒーを入れてくれるつもりらしい。

その時、携帯電話が鳴る。

「もしもし?」

『母さん? 詩子ですけど。今どこにいる? ショコラ? ちょうど良かった』


噂をすれば詩子だ。



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