ショコラ SideStory
「そういえば、さっきの電話詩子からよ。帰りは遅くなりますって」
「今から遅くなりますって、一体何時に帰ってくる気なんだ」
「何時でもいいじゃないの。過保護過ぎよ。少し自由にさせてあげればいいのに」
私が呆れたように言うと、隆二くんはムキになる。
「詩子は大事な娘だ」
「でも一人の女よ?」
「まだまだだよ」
「そんなことないわ。私がヤキモチ焼きたくなるくらいには大人よ」
そう言って、彼の視線を捕まえる。
じっと見つめると、隆二くんは私を凝視して、ゴクリと生唾を飲んだ。
「や、康子さん?」
「詩子は何でも出来るわよ。仕事だって、あなたが思う以上にやれるわ。やれるように見えないのは、あなたが詩子はこの程度だと決めてかかっているからよ」
「……」
「やらせてみればいい。あの子は絶対あなたが唸るような結果を出す」
「康子さん」
「私の娘だもの」
指を突きつけてそう宣言すると、その指を隆二くんが拾い上げる。
硬い指先。
でも私は彼の手が好きだ。
見ていると官能的な気分になる。