ショコラ SideStory


「そういえば、さっきの電話詩子からよ。帰りは遅くなりますって」

「今から遅くなりますって、一体何時に帰ってくる気なんだ」

「何時でもいいじゃないの。過保護過ぎよ。少し自由にさせてあげればいいのに」


私が呆れたように言うと、隆二くんはムキになる。


「詩子は大事な娘だ」

「でも一人の女よ?」

「まだまだだよ」

「そんなことないわ。私がヤキモチ焼きたくなるくらいには大人よ」


そう言って、彼の視線を捕まえる。
じっと見つめると、隆二くんは私を凝視して、ゴクリと生唾を飲んだ。


「や、康子さん?」

「詩子は何でも出来るわよ。仕事だって、あなたが思う以上にやれるわ。やれるように見えないのは、あなたが詩子はこの程度だと決めてかかっているからよ」

「……」

「やらせてみればいい。あの子は絶対あなたが唸るような結果を出す」

「康子さん」

「私の娘だもの」


指を突きつけてそう宣言すると、その指を隆二くんが拾い上げる。

硬い指先。
でも私は彼の手が好きだ。
見ていると官能的な気分になる。


< 43 / 432 >

この作品をシェア

pagetop