ショコラ SideStory
「おろすのか?」
「その選択肢を最初に言う男ってモテないと思うよー」
「でも康子ちゃん、仕事好きだろ」
「何で子供生んだら仕事できなくなるのよ」
俺の鼻先に人差し指を付きたてて、彼女は強気に笑って見せた。
「生むわよ。シングルになるかどうかは彼次第」
「……康子ちゃん」
俺を誤魔化せると思っているのか。
そう言ってしまいそうになった。
彼女の瞳は正直だ。
強気な言動の影に隠れた本音は皆ここから見つけ出せる。
潤んだ瞳は不安の証。
本当は誰より怖いくせに。
――――俺はそれがわかる男だぞ?
そう思って言えなかったのはなぜなんだろう。