ショコラ SideStory
結局、二人は結婚するという選択肢を選んだらしい。
やるじゃないか、弱小動物。
これはちょっとハッパかけに行かなきゃならない。
そう思って俺は彼が勤めるホテルに行った。
フロント経由で呼び出してもらったときには、凄く怪訝そうな顔をしていたっけ。
「……どちら様ですか?」
「俺は福田良成。桂木康子の同僚のカメラマンです」
「ああ、康子さんの。いつもお世話になって」
「妊娠させたって?」
その男は、驚いたように息を呑んだ。
一瞬を見逃したくなかった。
この表情はどっちだ?
怯んでるのか喜んでるのか。
畳み掛けるように、俺は知っている事実を突きつける。
「結婚するって?」
その問いには、嬉しそうに笑った。
くしゃり、そんな効果音が似合いそうな、筋肉の緩み方が胸を打つ。