ショコラ SideStory
*
ファインダー越しに見る彼女は今も変わらず美しい。
「で、旦那とはどんな経緯でヨリ戻したわけ?」
「はぁっ?」
タイミングを逃さずシャッターを押す。
「ほら、いい顔撮れた」
変顔といえなくも無い慌てたような顔だ。
「……その技術を教えて頂戴」
「それ教えちゃったら俺の仕事なくなるだろ?」
あれから彼女は離婚して、そして最近再婚した。
聞いてりゃアホみたいな話だ。
一番に愛されないのが不満、とか。
どんだけ強欲で女っぽいんだよって思う。
それでも。
再婚後の彼女は、あまり寂しそうな表情をしない。
きっと何かが変わったんだろう。
変えたのは多分、弱小動物だ。
「まあいいや。今度あの店行くよ。『ショコラ』だっけ」
「うわー、くんな。福ちゃんは、隆二くんに変なこと言いそうだから嫌」
「そう言われるとますます行きたくなるな。お、時間だ、またな」
今更ながらに胸の痣が痛むので、今度釘を刺しにいこう。
あの日の約束を奴に思い出させるために。
俺にしか取れない写真を手土産に。
【fin.】