ショコラ SideStory
「こんにちは、どうしたの平日に」
「俺は休みなんですけど、彼女は仕事で。ここで時間つぶしてるんです」
「ああそうなの」
会話していると奥から隆二くんがサンドの皿を両手に持って出てきた。
「あれ、康子さん。来てたの」
「来てたわよー。家に一人でいても暇だもの」
「買い物行くって言ってたのに」
「行ったけどつまらなかったからすぐ帰ってきたの」
ツン、と拗ねてみる。
なのに隆二くんは「そっか」と軽く流してサンドの皿を詩子に渡す。
「注文追加です。ケーキセットをガトーショコラとブレンドコーヒーで」
代わりに詩子からは注文が伝達される。
隆二くんは私にちらりと視線を送ると、
「康子さんもコーヒーでいい?」
とだけ聞いて厨房へ入っていってしまった。
別にコーヒーでいいんだけど、まだ頷いてないわよ、とか。
どうもくだらないことが引っかかる。
忙しいのよね、分かっているわよ。
だけどなんだかつまらないわ。
ああもう、イライラするのは更年期だからかしら。