ショコラ SideStory
「こっちの席にしましょ。カウンターじゃ隆二くんがうるさいから」
「あーすでに視線が痛いですけどね」
松山くんは隆二くんが怖いのかな。やたらに反応を気にしている。
視線なんてどうせ今だけよ。
だって今は時間的にケーキの注文が多いんだもの。
「どうせすぐ注文に没頭して気にならなくなるわよ」
「いや、桂木さんが関わると面倒ですよ。あ、相本さんの方がいいですか?」
「ふふ。“康子さん”がいいわ。私もマツくんって呼んでいい?」
そう言って笑うと、マツくんはちょっとたじろぐ。
面白い。取って食われそうとか思われてるのかな。
結局私たちは厨房が見える場所の二人がけの席に落ち着いた。
目の前にはコーヒーが二つ。マツくんはブラックのまま飲み始めたけど、私はお砂糖を2つ入れる。
「俺は構いませんけど、“康子”さんはハードルが高いっすね、特にこの場所では」
逆よ。この場所じゃなければどんな呼ばれ方でもいい。
隆二くんの反応が見たいだけなんだもの。