ショコラ SideStory

「いいのよ。ちょっとヤキモチ焼かせたいの。つまらないんだもの。休みの日なのに放ったらかされてて」

「へぇ、俺から見たらかなりべた惚れですけどね。ヤキモチって焼かれたいものなんですかね、女って」

「だって愛情なんて目に見えないもの。言葉や態度がほしいわ。マツくんの彼女はそんなこと言わない?」

「んー。どうだろう。俺って結構強引だから、見てやれてない感情もあるかもです」


マツくんは困ったように頭をかく。

強引だっていう自覚のある男なら大丈夫だと思うけど。
本気で強引な男は、相手の感情を【見てやれてない】なんて言い方はしないもの。


「若い時は隠すかも。甘えた自分を見せたくないとか思って。でも今は違うわね。分かりやすいものが欲しい。だって家族だもの。愛情はあって当たり前じゃない。もっと上回るものがあるかどうか知りたくなるのよ」

「家族か、なんかすげーな。でも隠すって事はやっぱり見られたくないモノなんですかね?」

「正確には、欲を知られたくないってことかな。愛してほしいって欲望は自分だけのものじゃない? 相手を思いやってるわけじゃないわ。そういうの知られるのが怖かった時もあったわよ」


そうよ。私はずっとそれが怖くて。
だから素直になれないんだわ。
本当はただ、一番にずっと愛されたいだけなのに。


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