ショコラ SideStory
「私? 私なんてしょっちゅうよ。まあ相手は主に生物じゃないんだけどね。あの人の頭のなかはケーキばっかりだもの。何が悲しくてクリームやイチゴにヤキモチ焼かなきゃなんないのかしら」
この際だから言ってやる。
女なんて何にでもヤキモチ焼くのよ。
こっち向いて欲しいときに彼が向いてるもの全部に。
その視線も指先も、いつになったらこっちを向くのよって。
「康子さんて面白いですよね。でも親父のケーキ嫌いですか?」
「嫌いじゃないわよ。悔しいだけ。私は欲張りなのよ。いつも一番でいたいの」
「一番ですよ、間違いなく」
アッサリとそう返す彼は妙に自信ありげで。
……男ってこういうところがズルい。
こっちがあがきまくっている間何にもしないくせに、時々どーんと爆弾のような一言を落とす。
そしてそれにやられちゃうんだわ。
悔しい。悔しいから反論してやる。
「そうかしら。 隆二くんもそう言ってくれたけどね。……どうして信じられなくなるのかしらね。恋愛って面倒臭いわ。わかりやすく目に見えればいいのに」