ショコラ SideStory

「分からないから面白いんじゃないですか。それに、好きな人が応援してくれるって思ったらなんだって頑張れる」

「あなたのケーキが好きだって言えって? ……嫌よ、そんなの。ケーキに負けたみたい。もっともっと美味しいのが食べたいって言うわ、私」


「なんかいいな、康子さん。親父が惚れるのが分かる気がする」


ほら、また。
そんな風に笑うのは辞めなさいよ。
こっちが負けた気になるじゃないの。


マツくんの彼女さんってどんな子なんだろう。
こんな男に惚れられて、自分の方がもっと好きになっちゃったら辛いわね。
私なら毎日キレるかもしれない。



「あら、可愛いこというのね。調子に乗っちゃうわよ。……麻由ちゃんだっけ? あなたの彼女は、きっと仕事も含めてあなたのことが好きなのね。だから素直に応援してくれるんだわ」

「どうだろ。俺、仕事入ると全然家にも帰らないし、彼女とも会えないし。いつか逃げられそうです」

「あははー。逃げられたら相手してあげましょうか」

「いや、そんな事したら親父が、今も厨房からの視線が痛いですよ本当」


心底参ったという顔で、マツくんが頭をかく。

そうか、こっち見てるのか。
少しは気にし始めてくれたのかしら?

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