ショコラ SideStory
「あははは、本当面白い。そうか、詩子ちゃんが親父の背中を押したのか」
「詩子がいたからなんとかなったようなものよ。親を説得するのに一番いい方法だった。感謝したわ、あの子に」
今もそうかもね。
今度の再婚だって、詩子がいなかったらどうなっていたかわからない。
恋愛って二人でしているようだけど、本当は色んな人が居て助けられてるんだわ。
本気で二人きりの世界に居たら、おそらく愛情なんてすぐ枯れてしまうのだろう。
「康子さんと親父さんの出逢いってどんな感じなんですか?」
マツくんがコーヒーを一口含んで問いかけた。
「出会いか。……ホテルのスイーツの取材だったのよ。それは隆二くんじゃなくて別のパティシエさんがつくったものだったんだけど。厨房で隆二くんをみて一目惚れ。ビビビってきたわよ」
忘れもしない、24歳の時。
別に男に困っている訳でも無いのに、この男を逃しちゃダメだと思った。
「そして私が押しまくったってわけ」
一緒にいたカメラマンの福ちゃんなんか微妙に引いてたくらいだったわ。