ショコラ SideStory
「ケーキを作る親父に惚れたってやつですか?」
「目と手がね、印象的だったの。眼差しが真剣で、とても丁寧な手つきで。……やだ。結局私ってケーキ作る隆二くんが好きなんじゃない」
ちょっとヤダ。恥ずかしい。
今かなり素で気づいてしまった。
マツくんはちょっと癖のある笑みを浮かべて私を追い込んでくる。
「やっと本音が聞けた。康子さんはケーキを作る親父に惚れたんですよ、そして今でも惚れてる」
「うわあ、嫌だわ。恥ずかしい! ちょっとやられたわ。マツくん、案外策士ね」
「見直しましたか?」
「かなり」
やられた、やられた。顔が熱いわ。
ちょっと窓の外でも見て調子を整えよう。
「麻由も、親父にケーキ作り仕込まれたんですよ?」
助け舟のつもりか、先に話題を替えてくれたのはマツくんの方だった。
「麻由ちゃんが? どうして? あなたの会社の子でしょ?」
「ちょっとトラブルで、ケーキが必要になった時に親父に頼んだんです。それで麻由も手伝って作ってたみたいで、あ、俺はその場にはいなかったんですけど。凄く厳しかったって言ってました」