悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 2~
四章
1.花火大会
8月下旬。
灯里は玲士とともに東京・隅田川の花火大会に来ていた。
花火会場までは玲士のマンションからバスで行くことができる。
昼過ぎから交通規制がかかるため、二人は少し早めにマンションを出て会場へと向かった。
そして日が沈む頃、ドンという音とともに夜空に大輪の花が咲き始めた。
「始まったよ、玲士!」
灯里は浅草橋へと続く道を歩きながら、会場の方角を見上げる。
灯里はこの日に合わせて浴衣を新調した。
紺地に紫や薄青の花が描かれたそのデザインは、若々しいが大人の落ち着きも感じさせる。
薄紫の帯や下駄、藍のバッグもそれに合わせ新調した。
浴衣一式を揃え直したのは中学校以来だ。
そして灯里の左手の薬指には、繊細な輝きを放つダイヤの指輪がある。
先週、二人で一緒に見に行った婚約指輪だ。
玲士から贈られたそれは灯里の指にしっくりと馴染み、とても美しい。
『この指輪はね、おれの奥さんになる予約の証だから。結婚指輪を嵌めるまでは、この指輪以外をこの指に嵌めちゃダメだよ?』