悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 2~




玲士の言葉を思い出し、灯里は顔を赤らめた。

――――奥さん。

玲士に言われるとなんだか面映ゆい。

灯里は慌てて首を振り、足早に歩き出した。

そんな灯里の隣で玲士が驚いたように眉を上げる。


「灯里、もっとゆっくり歩きなよ。転ぶよ?」


玲士が灯里の肩を抱き、顔を覗き込む。

灯里はその瞳に胸がドキンとするのを感じた。


玲士はしじら織の濃紺の浴衣に焦茶色の帯を身に着けている。

どちらかというと渋めの浴衣だが、玲士の透明感のある顔立ちにとても映え、似合っている。

普段でも相当格好いいのに、ましてや浴衣など着たら……。

通りゆく人々が振り返るのも無理はない。


「どんどん人が増えてくるね……」

「お前、はぐれるんじゃないよ? リードでもつけておけば良かったかな」

「あたしは犬か?」


ムクれた灯里に玲士はくすくす笑って肩を軽く叩く。

灯里はふんと鼻を鳴らし、前を向いた。


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