悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 2~
『あたしも、玲士が好きだよ』
数週間前の灯里の言葉が脳裏に蘇る。
あの言葉を玲士がどれだけ待ったか、灯里は知らない。
何年間、玲士がどんな思いであの言葉を待ち続けたのか、……灯里は知らない。
灯里の言葉は玲士の心に甘い水のように染みていった。
灯里の心があればもう何も怖くはない。
心からそう思った。
今、灯里は自分を愛してくれている。
玲士の心を受け止め、向き合おうとしてくれている。
一生を共にする覚悟を決めている。
だからこうして挨拶に来たのだ。
灯里には絶対に知られたくない、忌々しい過去……。
こんなものに足を取られたくはない。
玲士は拳を握りしめたまま、理代を見ることなくすっと脇を通り過ぎた。
そのまま振り返らず、廊下を歩いていく。
理代の濡れたような黒い瞳が、じっとその後ろ姿を見つめていた……。
――――そして。
その会話を予想もしない人物が聴いていたことに、このときの玲士は全く気付いていなかった。
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