悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 2~



「まぁせいぜい頑張って。せめてフルートらしい音を出してよね?」


――――なんという台詞。


灯里は心の底から怒りが沸きあがってくるのを感じた。

……信じられない。

こんなに綺麗なのに性格は最悪。


灯里はフルートに向き直って練習を始めた。

ここまで言われて黙っているわけにはいかない。



――――しかし。

それから練習時間のたびに灯里は少年に手酷いダメ出しをされた。

少年の言っていることは的を得てはいるが、言い方が最悪。

いちいち人の神経を逆撫でしないと気が済まないらしい。


「……お前、そもそも楽譜読めるの?」

「読めるに決まってるでしょ! それにあたしは『お前』じゃないっ」

「へぇ。……なんていうの? 名前」

「吉倉灯里! ……あんたは?」

「水澤。……水澤玲士」


今思えば、なぜこの時お互いの名前を知ろうと思ったのか?

今回たまたま隣同士になったけれど、二度と会うことはない。

この時はお互いにそう思っていたはずなのに……。


少年の名前は灯里の心に強烈な印象とともに植えつけられた。

しかし成長するにつれてそれは心の奥へと沈み込み、灯里はずっと忘れていた。

――――そう、入社式で再会するまでは。


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