悪魔のようなアナタ ~with.Reiji 2~
4.灯里の焦り
6月。
湿気を帯びた生暖かい空気が風に乗って窓から部屋に入ってくる。
灯里は自席のノートパソコンで見積書を作成していた。
決算明けのこの時期は例年であればあまり商談はないのだが、今年は猛暑という予報が出ているため夏を前にエアコンを入れたいという引き合いが多い。
灯里はパチパチとキーボードを叩きながらこの間の玲士との話を思い出していた。
――――自分が、どうしたいのか。
忍村商事は自分の性に合ってはいるが、絶対にこの会社でないとというまでの思い入れは正直、ない。
それに、玲士はどんどん先へと進んでいる。
彼に釣り合うためには、このぬるま湯のような環境でのんびりしていてはいけない気もする。
けれど自分はこれまで、営業事務しかやったことがない。
特に何か技能があるわけでもないし、資格を持っているわけでもない。
「……」