誠の絆~浅葱に誓いし時代を駆け抜けた仲間たちの物語~
第壱話『運命ノ絆』
私は父の死により、
ある多摩の道場に預けられることになった。

天然理心流『試衛館』…

噂ではボロ道場と聞いていた。
長州からだいぶ離れるんだなぁ…
みんな、何してんだろう…

"ブルッ!!!"

また身震いをした。
これで何度目だろう…
あれから何ヶ月も経ったのにあの出来事を昨日のように思い出してしまう…

私の近所に住んでいるおばちゃんは元々多摩にいたらしく、
私は家は焼き払われた上に身内がいないため私が多摩に行くのには好都合だった。

それは、吉田松陰の娘だと言えばここら辺の人なら差別をする始末だ。

多摩は長州から離れているし、私の顔も父上の顔も知るはずがないからだ。

でも念のためおばちゃんや皆から、
「吉田松陰の娘っていうことは秘密にしなさい!」
と言われた。

晋作や小五郎は、
そんなところに行かなくていい…

そう止めてくれた。

実際私も皆や長州を離れるのが嫌だった。
でも、私がここにいれば
周りのみんなまで避けられる。

"私と一緒にいたらみんな不幸になる"

そんなことを思って多摩に行くことにした。


「着きましたよ…」

私は駕籠から下りた。

目の前には
『試衛館』
と書いてある年期のあるであろう道場。
左右には土の細い道。
後ろには山と田んぼ。

ここで第2の人生が始まるんだ…
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