無自覚な指先【密フェチ】
無自覚な指先
数時間前まで20人ほどでひしめき合っていた事務室も、今は私と後輩の男の子2人きり。
デスクライトしかつけていないため薄暗く、カタカタとキーボードを打つ音だけが響いている。
いつ終わるだろう。
はぁっとため息を零し、壁に掛かった時計を見た。もうすぐ0時。
あと30分もすれば終電がなくなってしまう。明日は休みだけど、やっぱり家には帰りたい。
そんな甘えたことを考えているなんて、隣で真剣に仕事をしている後輩には言えない。
少し無口な彼は、端正な顔立ちで性格は優しい。なのに彼女はおらず、好きな人がいると噂で聞いた。
一休みする私とは対照的に、彼の手は忙しなく動きっぱなし。
キーボードの上を滑る彼の指はスラリと長く、繊細な指使いはピアニストのよう。
しかしマウスを掴めば力強く筋張り、男らしい魅惑的な一面も見せる。
男性の指先にたまらなく色気を感じてしまう私は、その色香に吸い寄せられるように無意識に見つめていた。
あの指に触れられたら――。
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