だってキミが好きだった
『あ、千早』
『……菫』
『10分前に来るなんて……なんだか千早らしいね』
『オマエ早いな』
『……急に話変えるとこも千早らしい』
『……悪い。でも先、来ようと思ってたのに』
『そうだったんだ。でも私千早待ってる方がいいかも』
『……』
『だって、頑張ってオシャレして前日にはワクワクして。それで好きな人よりも早く来てソワソワ待つ』
『……』
『そしたらね、好きな人が見えたら舞い上がるんだよ。その瞬間が好きになった、今日』
『……ふーん』
『千早照れてる?』
『……別に』
あの会話をしてから、
私は15分前、千早は10分前にいっつも来るようになったんだっけ。
……懐かしいなぁ。
記憶が無い今の彼が10分前に来たら凄いね。
上を見れば空を隠すかのように葉が揺れていて。
涼しさを感じ私は目を瞑った。
「アンタ」