だってキミが好きだった








え。




目を見開いて驚く私を他所に、彼は私の腕を引っ張る。







「アンタ何処行きたい?」


「え、」


「そういえば白井達から近い場所行きたいんだっけ」


「は」


「じゃあ最初は、」


「いやちょっと待って」


「……何」







あぶない。流されるところだった。



ホッと息を吐く私に対して彼は不機嫌そうだ。







「何で私と千早くんが一緒に回るの」


「アンタ一人だろ」


「そうだけど、私別に一人で回るし……」


「……それじゃあ、俺が困る」







……え。



何が?




はぁ、と溜息を吐く彼。




……もしかして。




そう思いチラリと周りを見てみる。







「ねぇねぇ、あの人やばくない!?」


「うわ、ちょーイケメン!!」


「声かけてみる!?」


「えーでも女連れてるじゃん」


「彼女?」


「じゃない?相手にしてくれなさそう」


「えーじゃあやめるか。あーあ、あんなイケメンめったにいないのに」


「ねー、残念」







……あぁなるほど。







「女避け?」


「……まぁ」


「……」







まさかとは思ったけど……。




苦笑いをしながら彼を見てみれば、その顔は歪んでいる。




……仕方ないか。







「分かった、一緒に回るよ」


「……ん」







彼の言った言葉はたった一言だけど。



その顔は少し嬉しそうだった。







< 109 / 147 >

この作品をシェア

pagetop