だってキミが好きだった
クスリと笑えば、ムッとする彼。
昔とやっぱり変わらない。
「……アンタは、いたわけ?彼氏」
「……うん、そうだね……」
ズキン。
心が痛む。
「いたよ」
いたよ。
大好きで、愛しくて。
強がりで、クールで。
でも可愛い一面もあって。
それで、優しい。
目の前のキミが、そうだよ。
なんて言えないけど。
「……そ」
「うん」
いたから。
それでいて私は経験したから。
あの、伝えきれないほどの悲しみを。
「私みたいな思い、してほしくないからさ」
別れる悲しみじゃなくて、
大好きなのに裏切られる悲しみとか、そういうやつ。
それってすごく嫌だから。
「……まぁ詳しくは知らないけど」
パクリ、パクリ。
次々にクレープを食べていく。
口の中に苺の味が広がった。
「……俺は別に良いと思うけど、白井の彼氏」
私の方じゃない。
別の方向を見て彼が言っているのが分かる。