だってキミが好きだった







俯きがちだった顔を上げてみれば、




――彼が言った言葉の意味が分かった。








「あ!いたいたー、菫ー!千早くーん!」







目に映るのは、私達に手を振って無邪気に、幸せそうに笑う瑞希。



それと、







「おー、いたいた。大分歩いたな、瑞希」







瑞希を愛しそうに見て、優しく笑う悠さん。







「ねぇ聞いてよ菫ー、悠さぁナンパされまくりなんだよ!?ムカつくー!」


「あ?オマエもだろ」


「私なんて全然だよ!もう、今日でやっぱり悠はモテるんだなって再確認した……」


「……別に、」


「え?」


「……俺の好きな奴、瑞希だし」


「……え?え?」


「……瑞希以外見ねぇから」


「……」







ボボボッと一気に顔が赤くなる瑞希。



きっと瑞希は今「むきゃー!!!」とか思ってるんだろう。






「……」






……あーあ。



見せ付けられちゃった。







「……悠さん」







あんなの見せられたらさ。






「話、良いですか?」






ちょっと安心しちゃうよ。







「……あぁ。俺も丁度話あったし。……瑞希」


「ふぇい!じゃない、はい!」


「……」


「へ、変な目で見るなー!!」


「……分かったから、…いいか?」


「ん?……あぁ、うん。分かった!私も丁度千早くんに話あったし!」


「は、」


「行くよ千早くんー」






座っていたベンチから無理やり立たされ、瑞希に連れて行かれる彼。




抵抗することも出来た筈なのに。




気、つかわせちゃったかな。









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