だってキミが好きだった
「……で、話って?」
ボーッと瑞希に連れて行かれる彼を見ていた私はその声にハッとする。
そうだ。
話。
「悠さんも私に話すことあったんですよね?……良いんですか?私から話しても」
「俺は後でいい」
「分かりました、それじゃあ」
スゥ、っと息を吸い、そしてハァ、と吐く。
初対面の人と話すのって緊張するけど……。
それ以上に、この言葉を言うのは緊張する。
スッと立ち上がって悠さんの目を見つめる。
「あのですね、」
「……」
「瑞希」
「ん?」
「……を、幸せにしてやってくださいね」
「……」
「……」
あ、れ。
言葉が返ってこない。
どうしよう、コイツ何?とか思われてないかな。
そう思うと焦ってしまう。
目をパチクリとしている悠さんは何を思っているんだろうか。
「……ぷ、なんだそれ」
「……」
わら、笑われた。
「当たり前だろ」
……なる、ほど。
瑞希、良い人選んだね。
悠さんはククッと笑ったままだけど。
さっき言った言葉が嘘じゃないことぐらい分かる。
良かった。
悠さんが良い人で良かった。
瑞希が良い人を選んでくれて良かった。
心の底から、嬉しい。
「…ふっ、アンタ他人思いだな、アイツの言った通りだ」
嬉しい、のに。
悠さんのその言葉を聞いて、その気持ちは消えた。
ドクン。
嫌な予感がする。