だってキミが好きだった
キミと千歳さん
ゴトン、ゴトン。
ゴトン、ゴトン。
伝言を聞いた、その次の日。
《次はK駅ーK駅ー》
私は悠さんに言われた通りの場所へと向かっていた。
今日は人が多い。
だから椅子に座ることは出来なくて。
ゴトン、と電車が揺れるたびに自分の体も揺れていた。
「……OASIS」
ポツリ。
この言葉を呟いたのは何回目だろうか。
昨日のデートのときもそうだった。
皆には聞こえてなかったみたいだけど、私は何回か呟いていて。
「え?」と聞き返されることもあったけどそれに答えは返さなかった。
いや。
返せなかった。
なんせずっと上の空。
ただずっと今日のことを考えていたんだ。
電車の扉側。
そこの鉄の棒に背を預け、私は窓の外を眺める。
電車から眺めるこの景色は、以前となんら変わっていない。