だってキミが好きだった
今の私の顔はどうなっているんだろうか。
きっと……、
「……あつ、い」
真っ赤、なんだろうな。
「気持ちは変わらない、って……」
両手を頬に添えて考える。
『菫』
『何ですか?』
『俺さ、』
『……』
『オマエのこと好きになった』
『……え?』
それはあの時のことを指しているのだろうか。
千歳さんのことは好きだ。
だけどそれは恋愛感情の好きではない。
『……ごめんなさい、千歳さん』
『……』
『私、千歳さんのことは大好きだけど、そういう好きじゃないんです』
『……』
『だから、ごめんなさい』
前に千歳さんに告白された時、ちゃんとそう伝えておいたんだけどな……。
パタパタと顔を仰ぎながら天井を見つめる。
まさかあんなこと言われると思ってなかったから顔の火照りが消えない。
急は困る、心の準備がないとダメなんだよ私。
パタパタパタ。
仰ぐ手は止めない。
『……分かってた』
『……え?』
『フラれることぐらい分かってたんだよ、たく。なんせオマエには――』
パタパタ、パタ。
『――千早が、いるからな』
パタ、パタ。
「……帰ろう」
過去の記憶を打ち消すようにガタッと立ち上がる。
『……はい』
もうそんなことは、言えないんだ。
『ごめん、ごめんな……ミナ』
もし彼が過去を取り戻せば、
またあんな風になってしまうんだろうか。