だってキミが好きだった
「……」
「菫ー」
「……」
「おーい、すーちゃーん」
「……」
“すーちゃん”でもダメか。
菫、あだ名付けられるの嫌って言ってたんだけどねぇ。
……ほんと、
最近ボーッとしてばっかしだ。
「……仕方ないか」
はぁ、と息を吐いて両手を菫の前に持っていき――パチンッ!両手の掌を叩く。
いたたた。強く叩きすぎた。掌が痛い。
痛みも持った掌をぶらぶらと下向きに揺らし、叩いた時ビクリと体を震わせた菫に視点を合わせた。
「ちょっと、びっくりしたよ」
「反応うすー」
「……そうかな?じゃ、なくてどうかしたの?」
「他クラスの子が菫をご指名でーす」
「え?」
「ああん?」
「……行ってくる」
「おう!がんばー!」
変顔から一転、満面の笑みで菫を送り出すが、当の菫は苦笑い。
菫は顔に出やすいからねー。
変顔なんて毎日やってるけど、呆れられたなアレは。
サラリと色素の薄い茶髪を揺らす彼女を見ながら目を細める。
「……何?」
「あ、あのさぁ…話、あんだけど…中庭、行かね?」
「……うん」
菫から視線を外して顔を赤らめる男は菫を連れていく。
チラリと千早くんを見てみるが、少し菫を見ただけで何の行動も起こさない。
普通さ、彼女がイケメンに告白されるんだから妬くとか止めるとか、もっと行動があると思うんだけど。
……なんか。
カレカノっぽくない。
「青柳さんまた呼び出し?モテるねー」
「千早くんがいるのにアイツも良く告白するよね」
「うんうん。フラれるだろうに」