だってキミが好きだった
うーん、と考える私の耳に入ってくる女子達の会話。
フラれるかぁ。
いや、確かに菫はフルな。
「……さて、と」
ふぅ、と溜め息を吐いてさっき菫が座っていた椅子にドカリと座る。
もはや女ではないね。自覚済みではあるけど。
「ねぇ千早くん」
私なんか気にも止めてない彼。声をかけても変わらない。
困る困る。どうしよう。
――千早くんには聞きたいこと、たくさんあるんだけど。
「……千早くん、遊園地でダブルデートした時言ったアレ、詳しく教えようか?」
知りたいでしょ?
だってあんなに反応してたんだから。
“菫ってさ、一ヶ月前に別れた彼氏のこと忘れられなかったみたいだから、親友としてはどうにかしてあげたいってずっと思ってたんだよ。だから千早くんが彼氏って聞いて嬉しかった”
あの時の千早くんの反応、凄かったなぁ。
遊園地で私と千早くん、菫と悠に分かれて話したあの時を思い出しながら、苦笑いを溢す。
続けて千早くんを見てみれば、私の言葉に反応したのかその瞳が私の姿を映していた。
お、興味持ってくれた。良かった良かった。
菫のいないこういう時に聞いておかないとね。色々と。
「知りたい?」
「……」
「返事しようよ、冷たいなぁ」
「……」
「あ、変わらないわけね」
そ、そうっすか。
仕方ないなぁ。
「その前にさ、質問していい?どうせ返事無いだろうからしちゃうね」
「……」
「ねぇねぇ。私めっちゃ疑問なんだけど、千早くん達って色々変だよね。あ、ごめんね。千早くん自身が、とかそう言うわけじゃないから」
「……」
「だってさ、あんなに冷たかった千早くんが…いや、菫のことは気になってたっぽかったけど。だけどさ、どうにもいきなりすぎない?」
付き合う、とかさ。
疑問なんだよね。
あの菫が、元彼のことを忘れられていなかった菫が、
――いきなり彼氏?
ほら菫って分かりやすいからさ。顔に出るからさ。
だから知ってるんだよ。
菫が、千早くんを見て悲しそうにしてること。
デートの時もそうだった。
そりゃずっと見てた訳じゃないけど……でも悲しそうにしてた。
「何か、あったの?」