だってキミが好きだった
「おめでとう千早くん。彼女、浮気しなかったみたいだよ」
「……」
「あーあ、また返事無しー」
ブーブー言いながら横を見れば、そこにいる千早くんは顔だけ窓に向け、視線を下に下ろしていた。
あの視線の先は愛しの彼女さんかな?
いや、そもそも愛しいのかさえ分かんないけど。
でも千早くんが私の質問に答えない限り、私は二人の関係を疑うことはあまりしないでおく。
「良かったね」
そう言ってもやっぱり彼の表情は変わらなくて、――だけど。
少しだけ、嬉しそうに見えた。