だってキミが好きだった
((Sumire viewpoint))
フワリと吹く風が私の髪を拐っていく。
乱れる髪を押さえながら、私はただ空を見上げてボーッと立っていた。
「告白、か」
先程まで一緒にいた男を思いだしながらハァ、と溜め息を吐く。
『あのさ、俺…青柳さんが好きなんだけど』
『私が?』
『……ん。景山と付き合ってんのは知ってるけど、諦められないっていうかさ……』
『……ごめんなさい』
『あっ、そうだよな、ごめん』
力無く笑った彼はそう言った後逃げるように帰って行った。
付き合ってない……彼とは付き合ってなんかいない……付き合っていたとしても、それは過去の話しだ。
私はそう思っている、だけど彼はどうなのだろう。彼は付き合っていると思っているのだろうか。
正直言って、彼が何を考えているのかが分からなくて怖い。
「記憶……か」
情けないな、私は彼と何年間付き合った?2年間だ、2年間彼とずっと一緒だった。
それなのに分からないなんて……情けない。
まぁ記憶を無くしているんだから、前と考え方が違っても可笑しくはないんだけど。
「千歳さん……」
ケータイを手に持ち、その中に書かれてある内容を、送られた日から何度見ていることか。