だってキミが好きだった







「ぇ……」






小さな声しか出せない。


出すことが出来ない。


こんな彼は、見たことが無い。



付き合ってたときも、出会ったときも、見たことが無い。






「片目を失明してるからんなこと言うわけ?」






違う、違うよ、






「……なんか言ったら?」






言えないんだよ。


どうしても、声が出ない。


私は彼に、……怯えてる。



意識しなくても震えだす手。


それが、彼の今の怖さを物語ってる。






「……そ。何も言うことねぇのな。……はぁ」






溜息をつく彼は、その瞳を決して私から逸らさない。


鋭く冷たいその瞳を。






「……アンタ、俺の嫌いな人間」






ズキリ。


心のどこかで、痛むような音がした。



彼の言葉はやっぱり冷たい。


まるで、軽蔑しているような瞳だ。



どうしてだろう。





彼に言われた言葉で、こんなにも胸が痛くなる。






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