だってキミが好きだった
「…最悪」
最後にそう言った彼は、絶対零度の瞳で私を睨みつけたあと、方向を変えてこの場から出て行こうとする。
その行動にさえ、ズキリと心のどこかが痛んだ。
拒絶。
その言葉が似合ってるだろうか。
彼は私を拒絶している。
そして、
彼は私を“軽蔑”の瞳で見ていた。
片目の話をした、瞬間に。
「……待って」
そうか。
「……寝にきたんでしょ。私が出て行くよ」
キミにとって片目のことを心配されるのは
嫌なことなんだね。
そんなところまで、やっぱり同じなんだね。
黒ソファーから起き上がり、私は早めに足を進める。
顔だけ私の方へ向けている彼はその場で止まっていて。
でも今の私に、彼を間近で見ることなんて出来なかった。
どうしてだろう。
なんでなんだろう。
目から、涙が零れてくる。
どうしよう。もう彼の横を通るのに。
泣いてるとこなんて見られたら、変に思われる。
頑張れ、頑張れ私。泣くな。
せめて彼の横を通り過ぎるまで、泣くな。