だってキミが好きだった







「…最悪」







最後にそう言った彼は、絶対零度の瞳で私を睨みつけたあと、方向を変えてこの場から出て行こうとする。




その行動にさえ、ズキリと心のどこかが痛んだ。




拒絶。




その言葉が似合ってるだろうか。


彼は私を拒絶している。


そして、





彼は私を“軽蔑”の瞳で見ていた。





片目の話をした、瞬間に。






「……待って」






そうか。






「……寝にきたんでしょ。私が出て行くよ」





キミにとって片目のことを心配されるのは

嫌なことなんだね。




そんなところまで、やっぱり同じなんだね。




黒ソファーから起き上がり、私は早めに足を進める。



顔だけ私の方へ向けている彼はその場で止まっていて。



でも今の私に、彼を間近で見ることなんて出来なかった。





どうしてだろう。


なんでなんだろう。





目から、涙が零れてくる。



どうしよう。もう彼の横を通るのに。


泣いてるとこなんて見られたら、変に思われる。




頑張れ、頑張れ私。泣くな。



せめて彼の横を通り過ぎるまで、泣くな。





< 37 / 147 >

この作品をシェア

pagetop