だってキミが好きだった
自然に段々早くなる歩調。
彼はもうすぐ、そこだ。
「……ごめんね」
俯きながら彼の横を通り過ぎる時に言ったその言葉は、聞こえていただろうか。
聞こえていたとしても、何に対して言ってるのか分かんないかも。
“ごめんね”
キミの右目のことを心配してごめんね。
キミは心配されることがキライだと知っているのに、ごめんね。
パタン。図書室の扉が静かな音を立てながら閉まる。
もうあの独特の香りは、しない。