だってキミが好きだった
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静かなタイルの廊下。音といえば私が歩く音ぐらいしかしない。
あーあ、もう授業始まってるだろうなー。あーもう、サボっちゃった。授業わかんなくなっちゃう。
でもそれでも。
今は、授業に出る気にもならないけど。
「……痛い、なー」
ズキリ、ズキリ。
図書室にいた時と同じように、まだ続く胸の痛み。
痛い痛い。なんなんだこの痛みは。
もうほんと嫌だな。
私本当にカウンセリングでも受けようか?
「……っ、痛い、よ」
胸が、どうしようもなく痛いよ。
どうしよう、どうしよう。
溢れる涙を、もう止められない。
逃げ込みたい。
早く、早く逃げ込みたい。
歩調を速めながら廊下を進んで行くと、見えてきた一つの扉。
それはまさしく、私が逃げ込みたかった場所。
彼が行かなかった、あの場所。
――保健室。
その白い扉をガラリと開ければ、エタノールの香りが香る。
あの図書室とは違う香りが、どことなく私を安心させた。
「……あれ?青柳さん、どうしたの」