だってキミが好きだった
キミと記憶
「はぁ」
今日も相変わらず暑い朝。
とぼとぼと重い足取りで学校の廊下を歩く私は、朝から溜息ばかり。
結局昨日は保健室でしばらく休んでから教室に戻ったけど、
……彼の姿は無かった。
それも、最後まで姿を教室に見せることは無かった。
まぁ、それは本当に助かった。
会ったりしたら、どうなってたか分かんないし。
……でも。
そこまで考えて、私はまた一つ短く溜息を吐く。
あーどうしよう。本当にどうしよう。
グシャグシャと髪を掻き乱して、苦悩する。
あぁ、もう。髪ボサボサ。
まぁ自分がやったことだけど。
それより、本当にどうしたら良いんだろう……。
ボサボサの髪を整えないまま、私は何度目か分からない溜息をまた零し、
重い足取りで廊下を進む。
「ねぇ、今日千早くんいつまでいるかなー?」
「あぁ、昨日朝しかいなかったもんねー。もうちょっと見たかったなー」
「だよねー。千早くん、カッコよすぎるんだもん!」
「あれは本当に目の保養ー!」
……あぁ、もう。
彼の噂をしている女の子達。
その子達をギロリと睨む。
すると、その子達はビクリと小さく体を揺らした。
そんなのお構いなしだ。
今の私にその人の名前は禁句なんだよ。