だってキミが好きだった
うんざりしながらも、足は進む。
彼のいる、教室へ。
「千早くーん!おはよー!」
「きゃー!!千早くーん!!!」
「ねぇねぇ千早くん、あのねぇ、」
教室に近づくにつれ、だんだん聞こえてきた女子達の声。
朝からきゃーきゃー。よく出来るよね。
わざわざ、一人の男のためにさ。
「あー、もう。千早くん、ちょーカッコいいー」
「そこらの男子より全然カッコいいよねー。芸能人並でしょ」
重い足取りでやっと教室の扉までついた私は、
そこで立ち止まる。
……芸能人並、ねぇ。
確かにカッコいいよ、彼は。
すんごくカッコいい。
それは十二分と分かってるから、お願いだから扉の前に集まらないで欲しい。
扉は人が出入りするところでしょーが。
これじゃあ通れない。
どんだけ人集まってるの。
扉の前に溢れ返っている女子の群れの後ろに立ちながら、私は深い溜息を零す。
そういえば溜息を吐くと幸せが逃げるって言うけど。
私今日だけですんごい幸せ逃げたね。
どうしよう、これから不幸なことばっかり起きたりでもしたら。
……いや、考えないでおこう。うん。