だってキミが好きだった






「あれ。菫じゃん。おっはー!」






負のオーラしか醸し出して無いであろう私の背後から聞こえた陽気な声。



そんなの振り向かないでも誰かなんて分かる。





「……瑞希」





そう言ってから後ろを振り向くと、やっぱりというか。声の主は瑞希。


片手を上げて「よーっす!」なんて言ってくる。






「どしたの。菫、どんよりしてるよ?空気が」


「瑞希の目は節穴か」


「え、嘘。どんよりしてないの?」


「まぁ嘘だけど」


「なんだそれ」





そう言った瑞希は、お腹を抱えて笑い出す。



クシャリと笑う美人さんな顔は健在だ。



そこらの男子が瑞希を見てるよ。





「はーあ。で?何でそんなにどんよりしてるの」


「べっつにー」


「何だそれ。親友にも話せないのかー!」


「……うーん」





話せない、かな。





「……まぁ大丈夫だよ」





あははは、となるべく明るい笑顔を作ってそう言う。


すると瑞希は少し困った表情になり、





「……そっか!」





でもすぐに笑顔を作ってそう言った。


優しい親友だ。



私が言わないことを無理に言わせようとはしない。


“親友だから”と言って、全部を聞きだそうとはしない。


だから好きなんだけどね。





「もう瑞希大好き」


「え、ちょ、わっ!!ななな何!?」


「大好き」





両手を広げて瑞希に抱きつく私に、瑞希は慌てふためく。


美人で性格も可愛くて。……羨ましい。





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