だってキミが好きだった
あのイケメン好きの瑞希が、超絶イケメンの彼を好きじゃないなんて言うなんて。
奇跡に近い。
「いやいやだってね。ちょっと聞いてよ」
「聞きますよ聞きますよ。一字一句逃さずに聞きますよ」
「うん。あのね、だってね。千早くん、好きな人でもいるんじゃないのかな?って思って」
「……好きな人?」
「うん。だって千早くん、絶対に呼び捨てで呼ばせないし」
確かに。
昨日も図書室で、そんなこと言ってた気がする。
……なんか思い出したら余計なことまで出てきそう。
もう考えるの止めよう。
でも……好きな、人。
記憶を失ってる彼に、好きな人。
……そ、っか。
そう思うと、チクリと胸が痛んだ。
可笑しい。何でこんなことで痛むの。
私変だ。疲れてるのかも。
「そう、なんだ。へえ」
「反応薄いなー。まぁ私の予想だからさ。気にしないで」
「うん」
気にしないよ。
気にするわけないよ。
胸に手を当てて、何度もそう唱える。
チラリと女子達の隙間から彼を盗み見すると、――パチリ。
彼と私の目が合った。
まさか彼も私を見ているとは思わなかったから、思わずドキリ。驚く。