だってキミが好きだった







彼の黒い瞳。


昔と変わらず、吸い込まれそうな綺麗な瞳。


それはやっぱり片目でも変わらない。




……だけど、その瞳を一瞬見てしまっただけで、顔をパッと逸らしてしまった。




き、気まずい。


やっぱり気まずいよ。もっと覚悟が必要だ。


昨日は見ても何ともならなかったのに、もう。


って、いうかなんで彼も見てるの。何で見てるの。


もしかして、もしかしなくても昨日のこと?



う、わ。


どうしよう。





「あ、ちょっと千早くん!?」


「千早くん、どこ行くのー?」


「またサボりー?」





あわあわとしている私の耳に聞こえた、ざわつく女子達の声。


どうやら彼は、またサボるみたいだ。


内心安心する。



彼と顔を合わすのはやっぱり気まずいから。


視線の先の廊下の白いタイルに向かってはぁ、と溜息を零しながら私は顔を上げる。





――この時、顔を上げなければ良かったとどれだけ後悔しただろうか。






「あ、千早くん!」





楽しそうにそう呼ぶ瑞希の声も、耳に入らない。





「千早くん?え、あれってさぁ…」


「あ、あの子って学校1可愛いって有名な子でしょ?」






ひそひそとそう話す女子達の会話も、入らない。



頭の中は真っ白だ。



その中で唯一思いつく言葉と言えば、





 ど う し て





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