だってキミが好きだった




顔を上げてみれば、目に映ったのは私の目の前に立ってる彼。




間近、だ。


なんで、目の前に彼がいるの。


なんで、どうして。



どうして昨日みたいに冷たい瞳をしてないの。




間近に彼がいたこともあるけど、

それ以上にその瞳に驚いて思わず肩が揺れた。



彼の瞳は決して優しいものではない。


だけど、冷たいものでもない。



どうして彼が私の目の前にいるのか。

どうしてそんな瞳をしているのか。



分からない。




「千早くん、その女に用でもあるの?」


「え、やだ。千早くん青柳さんと仲良いの?」


「うそー。でも二人が一緒なところって見たことないんだけどー」


「じゃあなんで千早くん、青柳さんのところに?」




そんなの、私が聞きたい。



私だって疑問なんだよ。


誰か知ってるなら、今すぐ教えて欲しい。




「千早くん、サボるんじゃないのー?」


「……」


「千早くん青柳さんと仲良いの?」


「……」


「千早くん?」




何度も声をかけてる女子に一言も返事を返さない。


ただジッと。


私をその目に映す。



……なんだか気恥ずかしい。



どうして、私を見つめてるの。



恥ずかしさに負けた私は、視線を下に逸らす。


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