だってキミが好きだった
顔を見れない。
映るのはタイルの床。
どうしよう。
変に思われたかな。
彼からの視線は感じる。
だけど顔を上げることが出来ない。
チラリと視線をタイルから逸らし、彼を映してみる。
見えたのは彼の制服のズボンと――彼の、手。
その手を見て、私は「あ、」っと小さく声を零した。
………そ、っか。
そっか。
下げていた視線をグイッと上げる。
視界に入るのは無表情の彼の顔。
さっきまで見れなかった、彼の顔。
うん、そっか。
そっかそっか。
もしかして、もしかしてもなく。
「言いたいこと、あるの?」
そうなの、かな。
小さく言った私の言葉に、彼が少しだけ目を見開くのが分かった。
小さな反応だから他の人は気付かないかもしれない。
いや、中々気付かない。
昔も、そうだった。