だってキミが好きだった
それでも。
他の人から見て私と彼が他人だと思えないのなら。
これ以上、彼女達に何も言えない。
私と彼は“他人”だから。
「……え?ま、まぁそうよね。」
「うん」
「……」
「それじゃあ、会話の邪魔してごめん」
「え?いや……」
「そっか」
クルリと後ろを向き、ヒラヒラと手を振る。
さっきまで彼のことを言っていた彼女達に。
――悔しい、な。
言い返そうと思えばできるのに。
でもそれをしないのは。
やっぱり私と彼が他人になったから。
ギュッと固く拳を握り、足を動かす。
再び扉の前で立ち止まり、取っ手に手をかけた。
「……菫、なんか争ってたね。大丈夫?」