だってキミが好きだった
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目の前には最近見た扉。
オープン式のその扉を引けば、またあの独特な香り。
その匂いを嗅ぐだけで、ズキリ、と胸が痛む。
あれだけ保健室で泣いたのに、だ。
立ち止まっていた足を一歩一歩、ゆっくりと動かし中に入って行く。
今日もまた、この図書室に先生はいない。
「……」
あぁ、来ちゃった。
来ちゃったよ。
だって気になったんだよ、仕方ない。
放っておけない。
あんな癖見せられたら。
知ってるからこそ、だ。
だって彼は人に無関心だから。
無関心なのに、他人にあんな癖。するわけない。
それも本人は自分に癖があること自体知らない。
なのに私にあんな癖を見せたってことは……。
彼にとって、無関心でいられない“何か”があった、ってことだ。
独特な図書室の香りがする中、奥にへと進む。
また、本棚の間を通って。
前と同じように、決して本は手に取らない。