だってキミが好きだった







***






目の前には最近見た扉。



オープン式のその扉を引けば、またあの独特な香り。



その匂いを嗅ぐだけで、ズキリ、と胸が痛む。



あれだけ保健室で泣いたのに、だ。



立ち止まっていた足を一歩一歩、ゆっくりと動かし中に入って行く。




今日もまた、この図書室に先生はいない。







「……」







あぁ、来ちゃった。



来ちゃったよ。



だって気になったんだよ、仕方ない。



放っておけない。



あんな癖見せられたら。



知ってるからこそ、だ。




だって彼は人に無関心だから。




無関心なのに、他人にあんな癖。するわけない。



それも本人は自分に癖があること自体知らない。



なのに私にあんな癖を見せたってことは……。




彼にとって、無関心でいられない“何か”があった、ってことだ。




独特な図書室の香りがする中、奥にへと進む。



また、本棚の間を通って。



前と同じように、決して本は手に取らない。








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