だってキミが好きだった
奥に進めば、見えてきた黒い長ソファー。
それは、私が前来たときと同じだ。
ただ違うのは。
そのソファーに、人が寝ているということ。
「っ……ぅ、」
小さな呻き声。
ソファーの前まで来て、立ち止まり、寝ている人物を見下ろす。
その人物はさっき廊下で話していた“千早くん”。
……でも。
「……千早?」
気付けば、そう呟いていた。
呻き声がした時点でおかしいとは思ってた。
見下ろす彼の顔は、酷く歪んでいる。
……どうし、たの?
何で、苦しそうなの?
なんで、どうしたの。
………もし、かして。
彼の端整な顔を見ながら、私はグッと唇を噛み締める。
『どうして……!!!』
脳裏を掠める、過去の映像。
『俺は……!!!』
それはいつ思い出しても。
やっぱり悲しい。
『俺はただ……!!!』
様々な言葉が頭を巡る。
でもその言葉はどれも皆、彼のもので。
『俺はただ、―――!!!』
その言葉を最後に目を伏せる。
過去の映像は、途切れた。