だってキミが好きだった
「……」
「……」
お互い無言。
といあえず、急いでササッと手を引っ込める。
どうしよう。
すっごく怪しまれてる。
それに、痛いほど睨まれてるよ。
「……ご、ごめん」
一応謝るが、彼は相変わらず無言だ。
無言のままやっぱり睨んでくる。
……触ろうとしただけで、これか。
私相当嫌われてるなぁ。
ズキリ、ズキリ。
またどうしようもなく、胸が痛み出す。
姿は彼のまま。
私が知っている“千早”のまま。
だけど、違う。
もう前とは、違う。
「……ごめんね」
彼の目を見て一言告げる。
私は彼にとって“嫌いな人間”。
そう言われたのに。
なのに、なんで近づいたの。
彼に近づいたらいけない。
いや、近づけない。
彼が望んだことだ。
それが彼の中の“他人”だ。
スッと立ち上がり、その場から立ち去ろうと後ろを向く。
大丈夫だよ。
もう、近づかないから。
キミに近づかないって決めてたのに、近づいてごめんね。
胸に手を置き、心の中で彼に謝ってから一歩を踏み出す。
「アンタ」
ピタリ。
彼の声が聞こえただけで、進めていた足が止まった。