だってキミが好きだった
……なんで、
なんで、止まるの。
変だ。こんなの。
彼の声を聞いただけで、苦しくなった。
胸締め付けられる。
「アンタ、俺を知ってんの?」
その声は至って普通。
たぶん、確信は無いんだろうな、って思う。
確信がある時の彼とは、声が違う。
彼にとって、その質問はきっと大切なこと。
だって自分の失われた記憶と関係のあることだ。
確信があってその質問をするのなら、
彼は少し低い声を出す筈。
私の知ってる彼なら。
そう、分かってはいるけれど。
「……ぇ」
動揺、してしまう。
思わずクルリと後ろを向いてしまいそうだった。
だけど、それは動揺してるのがバレてしまうからなんとか頑張る。
どうしてそんなこと聞いてきたんだろう。
確信が無いにしても、何か疑うようなことがあったから。
だから、聞いてきたんだと思う。
でも何にしても。
「知らないよ」
その質問には答えられないや。
後ろを振り返らず、図書室の床に目線を落としながら答える。
後ろで彼が「そ」と言う声が聞こえた。