だってキミが好きだった
またクルリと方向を変えて、一歩進む。
今私の目に映る彼は、弱々しいようにも感じる。
「ここに、いるね」
そう言えば、キミは安堵したようにも見えた。
強がりなキミは甘えることを知らない。
“傍にいて欲しい”と言う事ができない。
震えていた手はきっとさっき魘されていたせい。
魘されてたのは……辛い、夢を見たからかな。
きっと彼は誰かに寄り添ってもらいたかったんだろう。
ソファーの横に寄りかかりながら上を見上げる。
上を向いても白い天井しか見えないけど。
しばらくボウッと天井を眺めていると、静かになる図書室。
チラリと彼を見てみれば、目を閉じて寝ている。
歪んでいない顔にホッとした。
――ホッとした、その時だった。
「――――」
彼が、呟いたのは。
その声は、とても苦しそうで。
悲しい、声。