だってキミが好きだった
キミと夜のキミ
「菫ちゃん、お皿とってー」
「うん」
「菫ちゃん、アルプス一万尺のアルプスって日本アルプスのことなんだってー」
「うん」
「……菫ちゃん、聞いてる?」
「うん」
「……菫ちゃんの好きな人って、千歳(チトセ)くんでしょ?」
「うん……って、は?」
「やだ、そうなの!」
「いや違うから。なんで千歳さん?」
「千歳くんカッコいいじゃなーい!」
両頬に手を当ててキャッキャッと騒ぐ彼女。
ワンピースの上に白いフリルがついたエプロンを着てるこの人は、
実は母親だったりする。
「……今千歳さんの話しないでよ」
「えー、なんでー?」
「言ったでしょ。
学校に……彼が転校してきたって」
「千早くん?」
「うん」
分かってるじゃん。
なのに、なんで千歳さんの名前出すかなぁ。
千歳さんは、
彼のお兄さんだ。